2023年7月、東急不動産はマサチューセッツ工科大学（以下、MIT）の産学連携プログラム（「Industrial Liaison Program」以下、ILP）への参加を開始した。MIT ILPへの本格的な参加は、日本の総合不動産デベロッパーとしては初となる。MIT ILPやMITの教授、関連スタートアップなど、MITエコシステムとの連携で目指すのは、広域渋谷圏におけるイノベーション・エコシステムの構築だ。

MIT ILP×東急不動産 レポート

渋谷にイノベーション・エコシステムを─
不動産テックがもたらす、
持続可能な都市開発とは？

東急不動産株式会社、株式会社リエネ、JFEエンジニアリング株式会社（以下「JFEエンジ」）、J&amp;T環境株式会社（以下「J&amp;T環境」）、株式会社Jバイオフードリサイクル（以下「Jバイオ」）※1、アーバンエナジー株式会社※2は、渋谷区代官山町にて開業した「<a href="https://forestgate-daikanyama.jp/" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">Forestgate Daikanyama（フォレストゲート代官山）</a>」と横浜市鶴見区の「Ｊバイオ横浜工場」を起点に各社のリソースを連携させ、食品廃棄物における社会課題の解消とサーキュラーエコノミーの実現に向けた活動に着手することを発表した。※1：JFEエンジグループ（JFEエンジ、J&amp;T環境）とJR東日本グループ（東日本旅客鉄道株式会社、株式会社JR東日本環境アクセス）の出資で2016年8月設立 ※2：JFEエンジの100％出資で小売電気事業者として2013年12月設立<h3 id="h1fdfdda684">食品廃棄物リサイクルの課題</h3>食品小売業・外食産業における食品リサイクル率は、製造業・卸売業と比べ大幅に低いのが現状だ。売れ残り商品や消費者による食べ残しなどは、プラスチック包装・楊枝など異物が多く混入しており分別の手間がかかる。そのため、飼料化・肥料化には不向きであり焼却処理に回さざるを得ず、このリサイクル率を上げることは困難であり大きな社会課題となっている。<figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/a63e6803d259484297a4bcaf3d8d48e5/c48336557c964032a7e03dea2a3271bd/sub2.png" alt="" width="489" height="254"><figcaption>食品廃棄物の再生利用実施率※3</figcaption></figure>※3：（出典）<a href="https://www.maff.go.jp/j/shokusan/recycle/syokuhin/kouhyou.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">農林水産省　食品廃棄物等の年間発生量及び食品循環資源の再生利用等実施率について 推計結果　</a><h3 id="h05c293aec8">バイオの力で発電活用と残渣活用を両立</h3>Jバイオでは、食品廃棄物をメタン発酵※4によりガスを発生させ、そのガスで電気をつくり、残渣を肥料に再利用する。工場は横浜市鶴見区に立地し、食品廃棄物を多く排出する首都圏の受け皿になっており、従来焼却処分するしかなかった「容器包装プラ等の異物が混入する食品廃棄物」をそのまま受入れ、機械分別により有機物を取り出す設備を備えている。これにより、焼却処分される食品廃棄物を減らし、食品リサイクル率向上に大きく貢献するとともに、食品廃棄物由来のカーボンニュートラルな電力を供給することでCO2削減にも貢献する。また、メタン発酵残渣は肥料として再利用しており、2022年9月に固形肥料「はまのみのり」、液体肥料「はまのしずく」が農林水産省より肥料登録の承認を受け多数の農家で使用が始まっている。<figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/a63e6803d259484297a4bcaf3d8d48e5/830bb4c2bda94e938f038ef4e8e66ccf/sub3.png" alt="" width="566" height="427"><figcaption>Jバイオ食品リサイクル方法</figcaption></figure>※4：酸素の無い環境でメタン菌と呼ばれる微生物が有機物を分解し都市ガスの原料でもあるメタンを作り出すこと<h3 id="h4f9557268f">付加価値を創造しながらダブルリサイクルループを実現・拡大</h3>東急不動産はフォレストゲート代官山だけでなく、「<a href="https://shibuya.tokyu-plaza.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">東急プラザ渋谷</a>」、「<a href="https://kamata.tokyu-plaza.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">東急プラザ蒲田（東急ストア蒲田店・蒲田プラザ店）</a>」他からの食品廃棄物をメタン発酵させ、生み出される「電力」と「肥料」を全て有効活用する。「電力」は、アーバンエナジーとリエネの連携※5により、再生可能エネルギー由来の電力※6としてフォレストゲート代官山へ供給されるため、CO2削減に貢献する。「肥料」は、協力農家との連携により農作物の育成に使われ、パティシエ（江藤 英樹氏）による商品創造を通じて、高品位スイーツ等として生まれ変わり、フォレストゲート代官山で今後販売される。このダブルリサイクルループは、廃棄物の収集・受入れを担うJ&amp;T環境をはじめとする収集運搬業者、廃棄物の処理から発電及び肥料生産を行うＪバイオ、食品リサイクルプラントの設計等を担うJFEエンジ（Jバイオは、JFEエンジが建設）、農作物の育成を行うやさいの秋葉（神奈川県藤沢市）、ふるうつらんど井上（神奈川県藤沢市）、株式会社Fruitful sun vesta（神奈川県藤沢市）など、業界の垣根を超えた多様な事業者の連携により実現し、持続可能な形で拡大していく。消費者の人々にも、素敵なスイーツを食べるという楽しい体験をきっかけに、単純なリサイクルだけでなく、形や品を変えて循環する今回の取組みについても理解してもらい、このループの重要な一員として参加してもらう。今後も、様々な連携を通じて、代官山からサーキュラーエコノミーの実現を目指していく。<figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/a63e6803d259484297a4bcaf3d8d48e5/46a371be4ad24b8ab7a7cdc0545e851c/sub4.png" alt="" width="922" height="521"><figcaption>【今回のダブルリサイクルループの関連図】</figcaption></figure>※5：アーバンエナジーは小売電気事業者、リエネは取次事業者として連携 ※6：Jバイオを含むアーバンエナジーの電源に東急不動産保有のFIT発電所のトラッキング付非化石証書を割当てることに加え、東急不動産保有の非FIT太陽光発電由来の電力も活用することで実質的に使用電力量の全量を再エネ化<a href="https://www.tokyu-land.co.jp/news/2023/001033.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">東急不動産 公式プレスリリース</a>

「フォレストゲート代官山」と「Jバイオ横浜工場」を起点に、食品廃棄物におけるダブルリサイクルループの取り組みに本格着手

東急不動産株式会社は、ディープテック領域のスタートアップ育成・支援を目的とする渋谷エリアで最大級のイノベーション創出の場「（仮称）Shibuya Deep-tech Accelerator」を2023年11月竣工予定の「<a href="https://www.shibuya-sakura-stage.com/" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">Shibuya Sakura Stage（渋谷サクラステージ）</a>」内に開設することを発表した。本施設ではマサチューセッツ工科大学（以下、「MIT」）のJeffrey Grossman（ジェフリー・グロスマン）教授をアドバイザーに迎え、同教授と共に新規開発するアクセラレータープログラムを提供する予定だ。東急不動産は、国内外のスタートアップの集積を通じた広域渋谷圏の価値向上をめざして、シリコンバレーを拠点とする「Plug and Play 社」との共創や、スタートアップ向けスモールオフィス「GUILD」の展開、グローバルスタートアップ育成機関「シブヤスタートアップス株式会社」の共同設立などの取り組みを行っている。<figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/a63e6803d259484297a4bcaf3d8d48e5/2b97e01584c84e818e3b441b8a974bde/mit_4.jpg" alt="" width="1470" height="468"></figure><h3 id="hc68636ef46">MITエコシステムの活用</h3>東急不動産は2023年6月にMITとの産学連携プログラム（Industrial Liaison Program、以下「ILP」）に日本の総合不動産デベロッパーとして初めて本格的に参加することを発表以降、MITとの連携を深め、広域渋谷圏におけるスタートアップ支援の更なる推進と、ディープテック領域を中心としたイノベーションを創出する場づくりの検討を進めていた。本施設の開設をきっかけに、当社はMIT ILPを通じたMITエコシステム全体との協業を加速させ、広域渋谷圏におけるイノベーション・エコシステムの構築を推進する。<h3 id="hc1828b1eda">本施設の概要</h3>名称：（仮称）Shibuya Deep-tech Accelerator 場所：渋谷サクラステージ セントラルビル（所在：東京都渋谷区桜丘町1） 開設時期：2024年秋 床面積：約200坪 主な内容： ①MIT Jeffrey Grossman教授と新設する審査基準をクリアしたディープテック領域のスタートアップ企業に対し、同教授と共に新規開発したアクセラレータープログラムを提供。 ②MIT John Carrier教授とも連携、今後実践型プログラムを拡充予定。 ③パートナー企業とのグローバルで高度な産学連携を実現。 ④将来的なファンド設立（＄100M）による継続的な資金調達機会の提供。<figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/a63e6803d259484297a4bcaf3d8d48e5/191e1860dd534f999bbedce07a585b4b/mit_3.jpg" alt="" width="1420" height="442"></figure><h4 id="h1fde405568">MIT Jeffrey Grossman教授 コメント</h4>「東急不動産との取り組みを発表できることを光栄に思います。MITはエコシステムの構築に成功しており、日本においても大きな可能性を感じ、今回アドバイザー就任することに同意しました。世界が注目する街「渋谷」で、革新的なディープテック支援の新たなエコシステムを構築できると信じています。」 【経歴】 2009年MIT加入。エネルギー変換、エネルギー貯蔵等研究プログラムを開発。 200以上の科学論文を発表し、現在または保留中の特許を17件保有。 自身もアントレプレナー（起業家）として、現在2つのディープテック・スタートアップを率いる。 【主要な研究領域】 環境とエネルギー工学 、コンピュテーショナル材料科学<h3 id="hc2bfb29ff6">2023年10月5日、６日にMIT ILPとイベントを開催</h3>▶️「2023 MIT Startup Show Case in Tokyo」＠東京ポートシティ竹芝 2023年10月5日にMIT ILPが主催するイベント「MIT Startup Showcase in Tokyo」を東急不動産が保有・運営する「東京ポートシティ竹芝」で、AIとイノベーション・エコシステムをテーマに開催された。▶️ 「渋谷での産官学連携による新たなイノベーションへの挑戦　～世界をつなぐスタートアップ共創の実現へ～」＠SHIBUYA QWS 2023年10月6日にはMIT ILPと東急不動産が共催するイベント「渋谷での産官学連携による新たなイノベーションへの挑戦　～世界をつなぐスタートアップ共創の実現へ～」をSHIBUYA QWSで開催した。<figure><img src="https://images.microcms-assets.io/assets/a63e6803d259484297a4bcaf3d8d48e5/e56fbbea8b3747309e6e5920a97b7495/mit_2.jpg" alt="" width="1416" height="430"></figure>＜ディープテック分野＞ ディープテックとは、「科学的な発見や革新的な技術に基づいて、世界に大きな影響を与える問題を解決する取り組み」と一般的に定義されており、本取り組みでは具体的にサステナビリティ、AI、ロボティクス、バイオなどの分野を指す。高い問題解決力を秘めた専門性の高い技術が多く含まれ、SDGsへの関心の高まりや、大学発スタートアップの増加によって、ディープテック分野は今後の成長性に期待ができる。 ＜MIT ILP＞ 民間企業とMITの総合的な連携の窓口で、会員企業の興味や課題に応じたMITのリソース(教授陣、調査研究、関連スタートアップ等)の提供を通じて、産学双方に有益な成果を生み出すことを目的としたプログラム。 ＜Shibuya Sakura Stage（渋谷サクラステージ）＞ 2023年11月竣工予定、渋谷駅中心地区の都市整備基盤を完成させる、「職・住・遊」を兼ね備えた大規模複合施設。オフィス・商業施設に加え、渋谷駅中心地区で唯一、住宅を整備、国際競争力の強化に資する多機能なハード(サービスアパートメント、国際医療施設、インターナショナルスクール他)を実装した最先端の施設。<a href="https://www.tokyu-land.co.jp/news/2023/001034.html" target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow">東急不動産 公式プレスリリース</a>

TAG研究

ARTICLE

渋谷にイノベーション・エコシステムを─ 不動産テックがもたらす、持続可能な都市開発とは？

NEWS

「フォレストゲート代官山」と「Jバイオ横浜工場」を起点に、食品廃棄物におけるダブルリサイクルループの取り組みに本格着手

MITエコシステムとの協業による、渋谷最大級のディープテック・スタートアップ支援の場を「Shibuya Sakura Stage」に開設

ARTICLE

渋谷にイノベーション・エコシステムを─ 不動産テックがもたらす、 持続可能な都市開発とは？

NEWS

「フォレストゲート代官山」と「Jバイオ横浜工場」を起点に、食品廃棄物におけるダブルリサイクルループの取り組みに本格着手

MITエコシステムとの協業による、渋谷最大級のディープテック・スタートアップ支援の場を「Shibuya Sakura Stage」に開設

渋谷にイノベーション・エコシステムを─ 不動産テックがもたらす、持続可能な都市開発とは？